前略 東京様
気づけば、もう少しで1年経つんですね。
ぐっさんは、ずっとあなたに馴染めず、少し寂しい思いをしていました。
目に映る景色はどれもこれも自分に関係ないみたいに流れていて、いつもどこか、虚無でした。
日常は、テレビに映った映像の様で、自分は常にそれを画面越しにぼーっと眺めている視聴者の様な気分だったのです。
主人公のいない物語り。決して主人公にはなれない視聴者である自分。
白黒の無意味な映像をただただ、ずっと見させられている気分でした。
立ち並ぶビルは視界と色を奪って、立ち続ける事と勝ち続ける事だけを求めている様に、無機質にそこに存在していました。
立ち続ける事と勝ち続ける事が出来なかったぐっさんは、無機質でもそこに存在するとこが出来ませんでした。
景色の一部になって、誰かの物語りの脇役にすら、なれなかったのです。
あなたはぐっさんを叱るかもしれませんね。
「全てを知った気になるな、全てを知るには1年は短すぎる」と。
だけどこれ以上、立ち続ける事が出来ないのです。
あなたを知る事を、ぐっさんは恐れてしまったのかもしれませんね。
知れば知るほどに、自分の小ささを認めてしまうようで、怖かったのかもしれませんね。
それとも、あなたを知ろうとするのにはもう遅すぎたのかも知れません。
何度も何度も、あと5年早かったら…と思いました。
でも、ぐっさんは決してあなたを嫌いになったわけではありません。
良くも悪くも、こうなってしまったのは、自分の責任だし、選んだのも自分ですから。
時には、休むことも見切りを付けることも大事だと誰かは言いました。
13年、走りました。結果としては、何が残ったでしょうか?
まだ、ここでは見つけられてはいませんが、もう1度忘れてきた何かと、見つけられていない何かを、探しに戻りたいと思います。
あなたに出会わなければ、忘れていたということにも、見つけられていなかったということにも、気づかずに立ち続ける事に精一杯になっていたことでしょう。
ありがとう、気づかせてくれて。
ありがとう、思い出させてくれて。
そして、行ってきます。